住友化学Recruitment

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Special Edition 04 特別編集 社長の個人面談

社員から、そして社長から——。
事務系中堅社員と技術系若手社員が、水戸社長とともに
お互いに思うこと、考えていることを率直に語り合いました。
見えてきたのは、
風通しのよい職場で
自分らしく働く一人ひとりの姿でした。

Profile

Nobuaki Mito

代表取締役社長

1985年入社/農学研究科 農芸化学専攻

先端無機製品事業部
事業企画部

2010年入社/商学部

アグロ&ライフソリューション研究所
創薬科学グループ

2019年入社/生命科学研究科 分子化学生物学専攻

Prologue

一般的な就職関連情報からは見て取れない、
住友化学のカルチャーを感じ取ってもらえたら。

高校時代、生物の授業が面白くて、それで農学部に進みました。生物に関わる仕事がしたいと思い、学部の2年間と大学院の2年間は本当に研究に没頭していて、非常に楽しかったですね。生物学の題材には細菌や動物が使われることが多いのですが、私はモヤシを使っていたんですよ。そこからタンパク質を抽出して、タンパクの構造を調べる研究です。

当初は研究で用いるモヤシも自分で育てていたのですが、途中からそれでは全然足りなくなってしまって。そこで電話帳で近隣の業者さんを調べ、バイクにまたがり頼みに行きました。そうしたら、そこの社長さんがいい人でね、「研究に使うんなら、いくらでも持って行っていいよ」と。しかも、行く度に新製品をもらったりして。一般的なモヤシはケツルアズキなのですが、大豆のモヤシとかエンドウのモヤシとか、いまでは店頭でもよく見かけるアルファルファのモヤシとかね。いろいろなモヤシを食べました(笑)。

当時の理系の学生というのは、就職先を教授が決めるんですね。いわゆる教授推薦。私も助教授から「東の会社に行ってみたら?」と勧められ、見学に行かせてもらったんです。社会人になる自覚が足りなかったんでしょうね。皆さん、研究所でものすごく忙しくせっせと働いておられる様子を見て、社会人になるというのはこういうことなのかと憂鬱な気持ちで帰ってきました。そうしたら今度は教授から、「住友化学も見学に行ってみたら?」と。それで宝塚にある研究所に見学に行くと、皆さん、あたたかくて素晴らしい人たちでね。職場も忙しそうではあるのだけれども、大学の研究室と同じような雰囲気で、どこかほんわかとしていてあくせくしていない。「断然、こっちだな」と思いましたね(笑)。

入社後は農薬の研究室に配属になったのですが、農業に関わることができるのでうれしかったものの、どんなことをやるのか想像もつかなかったんですよ。そうしたら上司から、「長靴のサイズ、何センチ?」と聞かれて。「長靴がなんでいるのかな?」と思ったんですが、除草剤の探索研究には実際の田んぼが必要で、そのための長靴でした。以来、農繁期は毎日、宝塚の北西にある加西市の試験農場に通い、実際の農作業をしながら田んぼのなかで研究しました。会社の仕事でこういうものがあるのかと。本当に楽しかったですね。

もともと私は「アメリカに留学したい」とずっと思っていました。それを上司に相談したら、「博士号を取ったら考えてあげるよ」と。しかも会社も包容力があるというか、「休日は会社の設備を使って自由に研究していいよ。試薬代くらいは会社が出してあげるから」と。そこで私は仕事と関係のある研究を進め、無事に博士号を取得し、入社7年目に、アメリカに2年間留学しました。帰国後は、アメリカ向けの大豆、トウモロコシ用の除草剤を研究したのですが、製品の開発が中止になったことからチームも解散することに。私も本社に異動となり、3年ほど技術ライセンスに関わる仕事に従事しました。

その後、再び研究所に戻ることになったのですが、今度は門外漢の殺虫剤の研究ということで、それがちょっと不満でね(笑)。モヤモヤした時期もありましたが、やってみると非常に面白くて。その後は除草剤も兼務することになって、後半は研究のグループマネージャーを務めることになりました。そして同じ頃、防疫用薬剤の本社開発部の部長も兼務することになりました。これはメーカーではよくあることだと思うのですが、研究と開発はコンフリクトが度々起こる。開発部が「これやってくれ」と頼んでも、研究所は「いまは忙しくてできない」とか。ところが、私は双方の責任者でしたから、自分が決めたら研究も開発も両方進む。ものすごく仕事がはかどりましたね。

その後、知的財産部への異動が決まり、会社生活最大の転機を迎えるのですが、この話は後に予定されている社員との対談でおそらく話題となるでしょうから、そちらに譲ります(笑)。以後、企画部長を務め、常務として農薬や医薬の組織を担当し、健康・農業関連事業部門の部門長を経て、2025年、現職に就きました。

以上、長くなりましたが、私は自分の経験を踏まえ、感じていたことがありました。どういう事業をやっているのか、どういう仕事をやりたいのか。これは就職先を決める重要な要素ではあっても、すべてではないということ。むしろ、会社のカルチャーが自分に合うかどうか、こちらの方が大事なのではないかということです。カルチャーというのは、一般的な就職関連情報からは見て取れないですよね。ですから私は本コンテンツを通じて、住友化学のカルチャーの特徴的なところを皆さんに多少なりとも感じ取ってもらえたら。そのように思っています。

Dialogue.01×事務系中堅社員

経営に対する参加意識を
強くもつということ。

今日、水戸さんにお聞きしたかったのが、若手社員の育成についてです。私はどうしても細かい部分まで指導してしまいがちで、その点に課題を感じています。若手の自主性をうまく引き出し、物事の本質を考える力を育てるには、どうしたらよいでしょうか?

ひと言で言うなら、経営に対して参加意識をもってもらうことですね。たとえば、さんたちが担う業績管理の仕事は、ひと昔前まではExcelのバケツリレーと言われていました。部署の数値を打ち込み、それを次の部署へと回していく。そうすると部分的に任される人には単純作業に思えることから、「この業務って意味あるの?」という意見が出てくる。さすがに今はDX化も進みクラウド上である程度の集計はされますが、業績管理でこうした意見が出たときには、それが役員の判断材料となり、ひいては会社の方針を決めるのだと説明してほしい。若い人たちには自分の仕事がどういう形で会社に貢献しているのかを理解することで、経営への参加意識を強くもってほしいと思っています。

いま、私たちの部署では役員に対する業績報告を新入社員を含む若手にやってもらうようにしています。役員から若手に対しても、直接質問や指示を行ってもらい、その内容を若手から工場や研究所へ共有してもらっています。それにより、仕事への自覚と実感が醸成することで、仕事への主体的な意欲が高まればと。

それはいい取り組みですね。私も新入社員に会う度に話してきたのは、「未熟者ですけれども、しっかり勉強します。よろしくお願いします」という挨拶は絶対にNGだということ。新入社員でも会社に貢献するような仕事をする可能性は十分にあるし、現にプロ野球ではルーキーが活躍することもあるわけでしょう。しかも、若いことが武器になることもあるわけですよ。つまり、職場にあるのは上下関係ではなく対等な関係。そもそも私は、社内における上司と部下という言い方が嫌いでね、よほどのことがないと使わないんですよ。だから自分は未熟だとか、そんなふうには考えてほしくないと思っています。

実は私も「未熟者ですが」といった口でしたが(笑)、経験の差、役割の差はあっても、お互いに対等な関係で意見し合うこと、役職ではなく名前で呼んで構わないことを、最初の部署で教えてもらったように思います。

「頼むから社長と呼ぶのはやめてくれ。私には水戸という名前があるのだから」とね(笑)。それだけでも自由な発言、提案が促され、自由闊達な議論ができる。その上で決めるべきことは、課長や部長といった長が自らの責任できちんと決める。そういう職場のカルチャーを大切にしたいですね。

ちなみに、水戸さんが「この人は伸びる」と感じる社員には、なにか共通点はありますか?

さんもご承知のとおり、まず第一印象で判断したらダメですね。2~3日、一緒に出張で行動をともにするだけでも、印象というのはどんどん変わっていく。まして2~3年も一緒に仕事をしていると、第一印象とパフォーマンスはまったく結びつかないことがわかる。この点で「この人は伸びる」というステレオタイプはないと思う。その上でひとつ言えるのは、誰に対しても立ち向かっていける人だと思います。年下に対しても年上に対しても信念をもって立ち向かっていける、そういう人が伸びていると思いますね。物静かでも自分の信念をもって立ち向かっていける尖った人が、当社にはたくさんいます。

なるほど、信念をもって立ち向かっていく——。心に留めておきたいと思います。実はいま育児のための短時間勤務ということもあり、短期的な成果が表れやすい仕事や、自分である程度スケジュールをコントロールしやすい業務に偏りがちでして……。営業企画などお客様向けの締め切りがある仕事や、事業企画のような中長期的で正解のない課題には積極的に手を挙げにくいと感じることもあります。けれども、信念をもって立ち向かっていく姿勢さえ忘れなければ、いずれチャンスは来ると思うことができました。

そうですね。中長期的な事業戦略を考えるときも同じです。たとえば、当社は遺伝子治療に使う原薬について非常に高い技術で製造することができる反面、事業単体で見ると現時点では赤字。短期的な成果を追求するなら、撤退したほうがいいのかもしれない。けれども、遺伝子治療は必ず伸びていく、必ずや社会の役に立つ。「自利利他 公私一如」の信念に基づいて、ブレずに、今やらなければいけないことをやる。技術をさらに磨くとか、製造設備を拡大していくとか、そういうことが大事だと思います。足元は苦しいけれども、そこはブレることなく、迷わず取り組んでいく。

はい。ブレずに迷わずに、ですね。

ぜひ頑張ってください。一方で、いまのさんにお伝えしたいのは、英語では「Sit down and talk」と言われますが、「立ち話ではなくじっくり話をしようよ」という、そうしたゆとりも忘れないでほしいということです。限られた時間のなかで効率的に仕事をすることは非常に大切です。けれども、一生懸命に頑張っている人たちにこそ、職場の人たちと腰を据えて話をする、そうした時間も大切にしてほしいと思います。私の経験からすると、そこから何か新しいことが生まれてくることも少なくありません。もちろん、置かれている立場や状況は人それぞれで、誰もが同じようにできることではないと思いますけれども。

私はいま、子どもがいることもあって、職場の周りの方のサポートや、水戸さんのいまのお言葉も含め、会社にはとても感謝しています。ただ、これからライフステージが変われば意外な異動もあるのかなとも思っています。水戸さんご自身は、そうした異動を経験されたことはありましたか?

会社を辞めようかと思ったことがありました(笑)。農薬関連の仕事がやりたいと思っていたのに知的財産部への異動を言い渡されたときです。あまりにも想定外だったので、担当役員のところまで説明を求めに行き、そこでなだめすかされてね。それでもモヤモヤが治まらぬまま知的財産部に異動したのですが、いざ仕事をしてみたら非常に楽しくてね(笑)。自分の不明を恥じ入るばかりでしたが、住友化学という会社は本当に社員のことをよく見ていると思います。もちろん、いまは会社から一方的に異動を言い渡すことはありませんが、仮に意に沿わない異動先であっても、まずは「新しい職場で私はどのように成長できるかな」と、ぜひ考えてもらいたいと思います。私にとって知的財産部での3年間は本当に有意義だったし、いま振り返ってみてもよく考えてくれていたなと感じています。

幸い、私自身日頃から上司に頻繁にコミュニケーションを取ってもらっているという実感があります。次の異動先や数年後を見据えた、異動先についても、上司が積極的に話し合おうとしてくれていると強く感じますので、その点大きな安心感はあります。

それはよかった。逆にこちらからもさんに質問で、これからの住友化学に必要なことは何だと考えていますか?

新入社員をはじめとした多様な人材が意見を出し合い、互いに刺激し合うことで、これまでにない発想やイノベーションをさらに生み出していく必要があると考えています。住友化学には転職して他社から来られた方も多いですが、住友化学の文化・やり方を押し付けるのではなく、互いに刺激し合って変えるべきところは変えていくことができています。今後も多様なバックグラウンドを持つ人が当社に加わる機会は増えていくと思いますが、そういった新しい風を取り入れながら、住友化学の文化・やり方がどんどんアップデートされていくことが理想ではないかと思っています。

本当にそのとおりですね。30年近く前に、ある国内企業の農薬事業を買収し、数百人が当社に移られ、私の部署にも数十人が来られたんですが、本当に刺激になりました。お互いの情報を活用し、切磋琢磨できましたから。さんが指摘してくれたとおり、そこは当社の本当にいいカルチャーだと思います。買収先に一方的に当社のやり方を押し付けるのではなく、お互いの違いを認め合い、高め合う。これからも大事にしたいですね。

Dialogue.02×技術系若手社員

一番わかっているのは
担当者であるということ。

水戸さんは、これまでの仕事で一番の失敗は何でしたか?

この質問はよく受けるのですが、あいにくと個別の大失敗というのはないですね。十数年間ほとんど成果と言えるようなものを出せなかったという経験はあります。けれども、前向きにいろいろなことに取り組んでうまくいかなかったことは、必ずしも失敗ということではないと考えています。

研究においては、特にそう思います。先日、水戸さんにご報告をさせていただいたとおり、私は殺菌剤の開発候補化合物を見つけることができましたが、これも「うまくいかなかったこと」の積み重ねによる成果でした。

そうですよね。トライ&エラーのエラーというのは、別に失敗ということではない。そういう意味では、私は大失敗がなかった代わりに大成功もなかったかな。ただ、ひとつ誇れるのは、とにかくしつこかったね(笑)。このプロジェクトを誰よりも熟知しているのは自分だという自負があったから、周りから何を言われようが、最終的に「やめろ」と言われるまで粘り続けた。それが十数年という歳月になったのだと思っています。だからさんも、自分が一番知っていて「これをやるべきだ」と思っているんだったら、「やめろ」と言われるまでは徹底的にやり続けるべきだと思います。

「これは行けるぞ」という確信は、どのくらいの段階で得られるものなんですか?

私は初期の段階からでしたね。エラーを繰り返したことで、「ここが足りない」「あそこが足りない」というのがわかっていた。だから、それをクリアできれば必ず行けるという自信も確信もあった。それにいま、この職務に就いて再認識しているのは、そういう担当者の自信や信念が、結局は組織を動かすのだということ。立場上、いろいろな決断を下していかなければならないのだけれども、専門外なことは私にもわからない。そのときに何を判断材料にしているかと言えば、担当している人の自信です。自信のある人は、こちらが少しでも否定的な見解を述べると、漏れなく途中から怒り出す。「絶対行けるんだ」と。私はその自信、本気を見極めることを大事にしています。逆に担当している人がフッと不安そうな顔をするときは、慎重な判断を下しています。

これまでの私はそこまで粘れなかったので、とてもよいお話が聞けました。一番わかっているのは担当者である自分——。おっしゃるとおりです。実は日々の仕事の中では答えのない問いに直面することも多く、そうしたときにどのように決断すればよいのかお尋ねしようと思っていたのですが、「担当している人の自信を見極める」というお話なるほどと納得しました。

すべて答えはないですよね。やってみないとわからないことばかりじゃないですか。だったら、この分野においては自分が一番知っているという自信があるのなら、自分の過去からの経験、知見に基づいて、思い切って決断するということだと思うんですね。その上で、だんだんと責任範囲が広くなり、すべてを理解することが難しくなったときは、その分野の専門家、よく知っている人の意見を徹底的に聞いて判断していく、ということだと思います。

ところで、水戸さん、研究したくならないですか?(笑)報告会ではビジネスの話がメインになりますが、水戸さんは研究内容に踏み込んだ質問をされることも多いので、すごくお好きなんだなと感じています(笑)。

それは研究したくなりますよ(笑)。だって私、会社の最後のキャリアは研究所長ができればいいと思って、研究所の近くに家を建てたくらいですから(笑)。

実は私も、ずっと研究を続けたいという思いがあります。ですが一方で、もっと他の経験を積んだ方がよいのではないかと感じる部分もあります。自分の成長にとって何が一番よいのか正直、悩んでいます。これはきっと、私だけの悩みではないと思うのですが……。

そこは一番、悩むよね。ちなみに私は事あるごとに、自分はずっと研究にいたいと会社には言い続けていました。ところが、自分のキャリアを振り返ってみると、まったくそのとおりになっていない(笑)。けれども、さっきさんとも話したのだけれども、この会社は本当に社員のことをよく見てくれている。自分の希望だけでキャリアを積んでいたら、研究で終わっていたと思うし、それはそれで幸せだったかもしれない。けれども、自分で気づいていない可能性を会社が見ていてくれたから、今の立場があると思っています。

そうですよね。

ただね、厳格に決める必要もないんじゃないかなとも思う。途中からでも軌道修正はできる。それに、ひとつお伝えしたいのは、仕事以外の知見も深めてほしいということ。実は私の父も水産の研究者だったんです。他界して10年以上が経つのだけれども、ある日、父が学会誌のインタビューを受けたカセットテープが出てきて。それが亡くなった後、学会誌に掲載されたんですよ。そこには、こうあった。「最近の研究者はあたかも一直線に掘るような研究者が多い。けれども、もうちょっと周りを掘って進むような研究者も必要なのではないか」と。つまり、芸術でもスポーツでも哲学でも何でもいい。研究とは関係ないところの知見を深めることも必要なのではないかと。私は「生きているうちに言ってよ」と思いましたけど(笑)、人生経験を積んだいま、父の言葉に強い共感を覚えています。これは研究職に限らずすべての職種の人に言えることだけれども、成長したいと思うのなら、自分の仕事をもうちょっと広く捉えて考えてほしい。

なるほど。仕事の範囲のことだけを考えていたんですけど、外側をもうちょっと見るということですね。たしかに、考えていなかったです。ちなみに、水戸さんは住友化学で働く魅力をどんな点に見出していますか?当社は保守的な会社と見られがちですが、たとえば研究所においても、かなり独創的なことをやっている人は多いですし、自由に研究をする風土もある。結果として、革新的なものが生まれ、それに合わせて事業形態もどんどん変化している。これは非常に魅力的だと思っています。

私も同意見です。ただ、課題だと思っていることもあります。たとえば、私が研究所に入った40年前というのは、本当に個性的な研究者が多くてね。夜も煌々と明かりが灯る不夜城のようだった。各研究者は一国一城の主のようだったし、「これはオレの手柄だ」と成果を競い合う野武士集団のようだった。結果的に、新しいものも次々と生み出されたわけだけれども、いまはそのとおりにできるかというと、なかなか難しいところがあって。加えて、現代においては新しいモノを生み出す難易度もどんどん上がってきているし、スピードもどんどん速くなっている。顧客の厳しい要求にもタイムリーに応えていかなくてはいけない。そうすると、野武士集団では対応できない。組織的にやらなければいけないことが、どうしても出てくる。つまり、「個」よりも「組織」を優先せざるを得ない状況にある。果たして、これで独創的なモノ、革新的なモノが生まれるのだろうか。果たして、これで社員は満足できるのだろうか……。

難しい。他の人がどう考えているかわからないので何とも言えないんですが、私も結局、入社したときは歯車の一部のように「組織」に組み込まれたわけですね。振り返るとそのときはその方がよかったと思います。何も準備がないのに「何もないところから自分で探せ」と言われても、途方に暮れたと思います。けれども、組織の一員として経験と知見を積み上げたことで、いまは「何もないところから自分で探せ」と言われる立場にありますが、むしろ腕が鳴る。そういう意味では、入門編として歯車になるのは、これは皆やっていいと思います。その後で、「個」を選ぶか「組織」を選ぶかを決めればいい。できれば「個」を選ぶ人が増えた方が、独創的なモノ、革新的なモノが生まれる確率は上がるので、組織としては理想だと思います。

こういう議論ができるのはいいね。私個人としては、たとえば研究所の勤務時間の1~2割は、自分の発想に基づいた、何か遊びのような研究をやっていくのも一案ではないかと思っているのだけれども、どうだろうか?

ここ数年は、まさにそれを実践しようとしていますが、勤務時間が限られるなかで仕事が忙しくなると、その1~2割の時間も仕事に充てられてしまう側面があります。であるなら、その1~2割の時間を土日に回し、趣味としての研究という位置付けにするのも一案だと思います。趣味ととらえれば強制ではなくなるので、参加も自由ですし。ワークライフバランスにも通じる話ですが、要はバランスを自分で取れるのが理想だと思います。ライフステージによっても時間の使い方は大きく変わるので。もっとも、それを制度に落とし込むのは難しいかもしれないですけど(笑)。

そう、難しいんだよね(笑)。

いずれにしても私は、当面は自分らしい研究スタイルを追求しながら、新たな剤を探し当てたいと思っています。ひとつ成果を出しましたが、ひとつだけだと「たまたま」だと思われます。ですが、複数個見つければ「すごい」となる。それが私の夢です。水戸さんの夢は何ですか?

頼もしい言葉を聞けて、うれしく思います。私の夢はもちろん、住友化学を世界に冠たる企業にすること。これだけ優れた技術、優れた人材をもってして結果が出せないとなったら、それこそ「社長がヘボだ」と言われてしまう(笑)。私は、住友化学の名を世界に轟かし、日本企業復権の旗印にしたいと思っています。

Epilogue

全社でひとつの夢を追いかけ、
全力で取り組む——。
スタートアップのカルチャーは、
住友化学にもある。

水戸さんは技術系で、研究畑を歩んで来られた。対する私は事務系で、事業企画や業績管理畑を歩んできた。しかも、水戸さんと私とでは、キャリアの開きがあまりにも大きい。にもかかわらず、今日は多くの共通項を見出すことができ、お話は大変に参考になりましたし、勉強になりました。企業のトップというのは全然違う場所にいる人ではなく、僭越ながら同じ会社で働く仲間なんだと、そういう意識をいまはもっています。

私はかつて水戸さんがいらした研究所に在籍していることもあり、部門長だった水戸さんのお話を聞く機会も何度かありました。そのときからフランクな方であるとの印象をもっていましたが、そのとおりの人でした。「担当者が一番わかっているのだから、自分が行けると思うんだったら粘り強くやってみること」という言葉が深く刻まれました。それからさんとのお話も聞けたことで、キャリア形成についてもさまざまなとらえ方があるのだと感じました。それにしても、モヤシが小豆からできていて、種類がいっぱいあることは衝撃でした(笑)。

たしかに(笑)。

私もモヤシの話をしたのは久しぶりでした(笑)。社長に就任して以降、社員の皆さんと対話する機会をできるだけつくってはきましたが、住友化学は大きな会社なので、直接話したことのない方はたくさんいます。そうしたなかで今回、このような機会を持てたことは私にとって大きな収穫でしたし、いろいろな考えが聞けて非常によかった。ひとつには、どうやってキャリアパスを考えていくか、この点については会社としてもしっかりと考えていきたいと思いを新たにしました。そしてもうひとつは、皆さんが情熱をもって仕事に取り組んでいる姿に触れることができ、非常に心強く感じました。

キャリアパスについては、ワークライフバランスも含めて私も模索しているところです。さんとの対話をお聞きしながら、私も異動を含めたさまざまな変化を柔軟に受け止めていきたいと思いました。臨機応変な形でキャリアを重ねていく。そうすることで後進の方々に多様な働き方を示していく。その一助になれたらと思っています。

さんには、知的財産部への異動がひとつの転機だったとお話ししましたが、実はその前、除草剤から殺虫剤へと研究対象が変わったことも大きな転機でした。しかし、私はそこに面白さとやりがいを見つけることができた。皆さんも耳にしたことがあるかもしれませんが、私は「モチベーション3.0」が大事だと考えています。生存本能に基づく動機づけ、信賞必罰といった外発的な動機づけ、そして、それに続く内発的な動機づけを重視する考え方です。具体的には、自分で決めたいという欲求、成長したいという欲求、自分の仕事が社会に役立っていると感じたいという欲求。こうした欲求を満たせる職場が理想であると考えています。

私も博士号を取得したいです(笑)。

それです(笑)。今日、お二人が話す内容、語る姿に触れて、住友化学には「モチベーション3.0」を満たす土壌、カルチャーがあることを再認識できました。大企業と対極的な組織であるスタートアップ企業は、社員と社長の距離が近く、全社でひとつの夢を追いかけ全力で取り組んでいる。一方で、住友化学がそれを実現できないかというと、決してそんなことはないと思うことができました。現場で日々奮闘するお二人と、こうしてまとまった時間、話をする機会を持てて本当によかったし、勇気づけられました。今日はどうもありがとう。

Special Edition特別編集