半導体の基板となるシリコンウエハ上に回路パターンを形成するために使われる感光性材料です。微細な回路をつくるために鍵を握る材料の一つであり、半導体の製造プロセスにおいてなくてはならない役割を担っています。回路の微細化は、半導体開発において最大のテーマ。さらなる微細化に向けて、新たな技術革新が始まろうとしています。
Project Story 02 : ICT&モビリティソリューション部門
最先端領域での開発・製造から
グローバルな事業構築まで
次世代フォトレジストを巡る挑戦。
もはや半導体の進歩なくして社会の発展を語ることはできないだろう。その半導体の製造プロセスにおいて、なくてはならない材料が「フォトレジスト」だ。住友化学の半導体材料事業において重要な役割を占める製品である。今、半導体の劇的な進歩とともに、フォトレジストも新しい時代を迎えようとしている。住友化学が挑む「先端フォトレジスト開発プロジェクト」は、強みを持つ有機合成技術を武器に、世界トップレベルの微細加工技術へ対応した、次世代フォトレジストを創出するプロジェクトである。
このプロジェクトは単なる製品開発にとどまらず、研究開発・製造・事業部など複数の部署がワンチームで連携し、顧客ニーズに応じた材料設計から試作・評価・量産化までを一気通貫で推進するものであった。さらに、海外関係会社や現地スタッフとも緊密に協働し、ライセンス契約や国際交渉などグローバルビジネスへの挑戦でもあった。
Profile
ICT&モビリティソリューション研究所
フォトレジストグループ 主任研究員
2016年入社/総合化学院 物質科学コース
半導体材料事業部マーケティング部
兼 事業企画部
2017年入社/政治経済学部 経済学科
大阪工場 製造部 第二製造課
兼 生産技術部
2018年入社/理工学域 自然システム学類
ICT&モビリティソリューション研究所
フォトレジストグループ
2021年入社/理学院 化学系
Chapter01
グローバルマーケットで、
次なる競争優位性を掴むために。
—— 半導体フォトレジストとは、どのような製品なのでしょうか?

—— その革新の担い手となる材料が、今回のプロジェクトのテーマである先端フォトレジストというわけですね。

そのとおりです。最近、半導体業界では各国がしのぎを削っていますが、このフォトレジスト分野についていえば、日本の企業が大きなシェアを占めていてほぼ独壇場という状況です。住友化学のICT&モビリティソリューション部門においても重要な成長領域と位置づけ、世界の名だたる半導体メーカーに材料を提供しています。この先端技術でさらに競争優位性を高めていきたいですね。
—— 今日集まった4人は、プロジェクトでどのような役割を担っているのですか?

私と
さんは研究所に所属していて、研究開発に携わっています。
さんは、ほぼずっと先端フォトレジストを担当しており、入社5年目にしてこの分野のスペシャリスト的な存在です。

さんは、私の5つ上の先輩で、先端フォトレジストの開発をされていますが、私とは少し担当が違いますよね。
さんは、フォトレジストに使用する原料に関して新規素材を設計・創出するリーダーです。私は別のチームに所属していて、レジスト原料の組み合わせの最適化によってレジストを設計し、顧客の要求する特性を実現する開発を担当しています。

そして、研究開発チームが開発した製品を、工場で実際に量産できるプロセスへスケールアップしていくのが私の役割です。製造プロセスの標準化・合理化、新規設備の導入など、技術スタッフとして製造現場を支えています。

今回集まった4人のうち、私だけが文系出身です。入社後、部門全体の事業管理などに携わり、5年目に現在の事業部に異動しました。今回のプロジェクトでは、コスト試算や顧客への価格提案、顧客や海外販売会社との交渉のほか、中長期的な事業戦略の立案などビジネス全体に携わっています。
Chapter02
開発、製造、そして事業部門が
ワンチームとなって。
—— 具体的に、プロジェクトはどのような連携のもとに進められてきたのでしょうか?

まず私たち研究所のメンバーが顧客ごとの要望に応じて新しいフォトレジストを開発します。顧客との打ち合わせを経て評価するサンプルを決定し、サンプルを作成・提出します。そのサンプルを顧客に評価してもらい、フィードバックされたデータをもとに更なる改善をしていくというのが大きな流れです。

顧客ごとに回路パターンのレイアウトなどに特徴があり、それらに合わせて原料の組み合わせなど処方設計を進めていきます。高度な要求に応えるためには、分子設計にまで踏み込んだ検討が必要となり、研究所内の有機合成のチームとも連携しています。顧客と直接議論するため、海外出張が多いのも特徴と思います。

こうして開発されたフォトレジスト材料を工場で量産化するためには、製造プロセス(特に、釜の反応の温度や圧力、流速など、そのパラメータは多種多様)を詳細に確認しながら製造を行わなければなりません。最先端の材料であるため、異物の混入など品質管理についても徹底した体制づくりを進めました。
—— このプロジェクトにおいて、住友化学ならではの強みはどこにあるのでしょうか?

製品のサイクルが短い半導体分野では、材料の開発でも他の化学品にはないスピードが求められます。その要求に応えていくためには、開発と製造、さらには事業部門との密接な連携が欠かせません。このあたりが、私たちの強みだと思います。

実際、私たちがいる研究所は大阪工場に隣接しており、製造部の
さんとも気軽に相談できる関係にあります。開発サイドの無理難題にも快く対応してくれて、いつも助かっています。

開発から製造へのステップアップといっても、実際には明確な線引きがあるわけではなく、行きつ戻りつといった感じですよね。まして今回のプロジェクトは最先端品質へのチャレンジであり、開発と製造の密接なすり合わせがブレイクスルーの鍵を握る。そこに私たちの強みがあり、住友化学で半導体材料に取り組む面白さだと思っています。

住友化学の半導体材料事業部では、研究所と工場ばかりでなく、
さんがいる事業部のオフィスも同じ拠点に集約されています。このような体制は、化学メーカーでも希有ではないでしょうか。

私自身、価格設定で悩んだりすると、
さんや
さんに直接相談を持ちかけたりしています。開発や製造の現場が近く、同じチームのメンバーとして一体感を持って仕事に取り組めることは、事務系社員にとっても大きな魅力だと思いますね。
Chapter03
世界マーケットを視野に、
韓国で製造拠点を立ち上げる。
—— 今回のプロジェクトでは、最先端での製品開発に加えて、グローバルな製造体制の構築にもチャレンジしています。

きっかけは韓国の大手半導体メーカーからの打診でした。この顧客向けに先端フォトレジストを開発していたところ、現地での製造を打診されたのです。スピーディーかつ安定的な供給を実現するためには、製造の現地化は住友化学にとってもメリットがあります。大阪工場に加え、海外に先端フォトレジストの製造拠点を設けることは、韓国をはじめ幅広い顧客へ展開を図っていくうえでも重要な戦略であると意思決定が下されました。
そこで、住友化学の韓国関係会社の製造拠点を強化し、先端フォトレジストの製造ラインを立ち上げることになったのです。

大阪工場で蓄積した製造ノウハウを現地に移管するために、私も韓国に長期間出張しました。先端フォトレジストを製造するためには、最新の設備を導入し、最先端の環境を整えなければなりません。製造条件も大阪工場と若干異なるため、その調整で苦労しました。また、現地の作業メンバーの教育も重要なタスク。戸惑うことも多くありましたが、考え方や文化の違いを超えて、海外で新しい製造ラインを立ち上げたことは、自分にとっても大きな経験となりましたね。

私は、ビジネス面での交渉を担当しました。グループ会社とはいえ、重要な技術を移管するためにはライセンス契約の締結が必要になります。適正な金額などを算出し、経理部や法務部とも連携して社内の意思決定をサポートしました。先端フォトレジストは最先端製品のため国の認可が必要であり、その交渉も担当。原料の供給体制など、グローバルな事業スキームの構築も重要なタスクでした。
—— この製造移管には、開発チームも携わったのでしょうか?

私はちょうどその時期、台湾のグループ会社に出向しており、直接は関わっていません。台湾では、先端フォトレジストをはじめ半導体材料の技術営業を担当し、韓国での進捗状況は常にチェックしていましたが——。確か
さんは担当していましたよね?

そうですね。韓国で先端フォトレジストの製造ラインが立ち上がった後、改善に関する案件があって私も携わりました。開発チームの他メンバーが現地まで出張しています。

現在では、製造も安定化し、大阪工場に並ぶ、先端フォトレジストの重要な製造拠点となっています。
Chapter04
材料を起点にして、
半導体の進化に貢献していく。
—— 先端フォトレジストのプロジェクトを経験して、皆さんは今後、どのようなチャレンジをしていきたいと考えていますか?

私は入社後、研究所で製造プロセスの開発に携わり、2022年に製造部に異動してきました。現在は、化学工学の知見を活かしつつ、ものづくりの現場に携われる仕事がとても楽しく、やりがいを感じています。私が所属する大阪工場は、半導体材料事業の中核となるマザー工場としての役割も担っています。製造ラインの自動化など、大阪工場でもまだまだ取り組むべきテーマは数多くあります。海外の製造拠点を牽引するような革新にチャレンジすると同時に、海外の拠点からも学び、事業部門全体の成長に貢献していきたいと思っています。

将来のキャリアプラン……と聞かれると、正直言って悩んでしまいます。今は仕事が楽しくて仕方ないし、開発グループのメンバーも素敵な人ばかり。しばらくはフォトレジストの開発に携わっていきたいと考えています。

フォトレジストは、半導体材料事業の中でもとても重要な製品。先端フォトレジストの開発を通じて、そのポジションを確固としたものにしていくことが直近の目標です。さらに将来的には、フォトレジストに続くような、新規材料事業の立ち上げにチャレンジできたら面白そうですね。

半導体の世界は止まることなく進化していることから、住友化学のビジネスの中でも半導体材料は動きがダイナミックで、大きな可能性を秘める分野です。今後は、そんな事業の先端を切り拓いていくような大規模プロジェクトに携わってみたいと考えています。半導体の進化を支える、半導体材料事業を通じて、社会の発展に貢献していきたいですね。