Menu

住友化学の世界戦略を加速する
サウジアラビアコンビナート建設計画

Project Story
01

ペトロ・ラービグプロジェクト

be WORLD CORE その志が、世界の芯になる

Personalities

ラービグ計画業務室
部長
佐々木 義純

#1

世界最大級の石油コンビナート建設への誘い

2002年、当時、住友化学石油化学業務室で海外プロジェクトを中心として技術企画業務を担当していた佐々木義純たちは、投資顧問会社との電話会議の席上で、ある事業参画のオファーを受けた。投資顧問会社が打診してきたのは、サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコ社と組んで、世界最大級の石油精製・石油化学コンビナートを建設するという計画だった。サウジ・アラムコ社が保有する紅海沿岸のラービグ精油所の石油精製設備をアップグレードするとともに、安価なエタンを利用し石油精製から石油化学製品までの製造を一貫して行う総合コンビナートを広大な敷地に建設するという。

佐々木は「願ってもないチャンスだ」と思う反面「リスクは高く、極めて慎重な判断が必要」と考えた。建設費用は数千億円、佐々木たちの判断を超える額である。そして住友化学は石油精製の経験がない。さらに中東に位置するというカントリー・リスク、テロ、紛争、当事国の政争など、ネガティブな要素も決して少なくなかった。これまで日本企業が苦渋を味わったプロジェクトが、佐々木の脳裏をよぎった。

#2

積極策か、それともリスクの回避か

佐々木たちの逡巡に対して、上司で石油化学業務室担当役員であった石飛修(現代表取締役会長・CEO)は即座に返答した。
「せっかくのチャンス。参画の可否決定を急がず、もっと情報を集めなさい」
確かに、見送るには惜しい計画だった。このコンビナート建設が成功し設備が稼働すれば、安価なエタンを原料に使用できることから、住友化学は強力なコスト競争力を持つことになり、グローバルな石油化学製品市場で大きなアドバンテージを発揮できる。そして、このタイミングなら住友化学が本格的な海外生産拠点として計画したシンガポール石油コンビナート建設に関わった社員が在籍しており、そのノウハウを継承し、発展させていくことも可能となる。

石飛の指示に従い、佐々木たちは限られた時間の中で情報を収集し、分析を重ねた。情報収集の内容は、計画の概要はもとより世界の化学産業の動向予測にまで及んだ。原油価格や化学製品の市場予測、それらに連動する採算性、建設や物流インフラ整備にかかるコスト、技術的なライセンスコストや課題、中東地域の政情や地政学的リスクも含めて考慮し、プロジェクト参画の妥当性を多角的に探っていった。そして辿り付いた結論は、参画の価値は十分にあるというものであった。


#3

いくつものハードルを乗り越えて計画実現へ

ロンドンで行われた最初のプレゼンテーションでは、佐々木の上席社員が住友化学の実績と自社技術を、サウジ・アラムコ社の幹部や投資顧問会社たちにアピールした。エタンを分解して生産したエチレン、既存の石油精製設備をアップグレードして生産されるプロピレンを原料にどのような石油化学製品を製造していくかといった計画。計画実現を担保する技術力、販売力、シンガポールでの実績やファイナンス面の安全性など、住友化学の企業力そのものを訴えるものであった。ロンドンでのプレゼンテーションとは別に、佐々木は関係者を日本に招いて自社の国内石化拠点である千葉工場や併設してある研究所の視察を主導した。

そこでは自社技術によって生み出されたポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレンオキサイドを製造するプラント、最新の研究設備や成果を紹介し、住友化学の技術力を強くアピールした。
佐々木たちの努力が実を結び、住友化学は第一次のプレゼンを勝ち抜くことができた。最終的に絞られたのはわずかに3社。いずれも世界有数の化学会社。すぐに第二次のプレゼンが行われた。より具体的な設備概要や稼働後の販売体制、本契約となった場合の諸条件など、佐々木たちは一次プレゼン成功に浮き立つことなく、さらに踏み込んだ内容を周到に検討して臨んだ。


#4

動きはじめた巨大プロジェクト

2004年に入り、住友化学が第一交渉権を獲得した旨が通達される。それを聞いた佐々木が感じたのは、嬉しさよりもはるかに大きな緊張感だった。今まで考えたこともないスケールの仕事に、自ら関わることになったからだ。その後、佐々木はラービグ計画準備室を経て、英国の住友化学UKに出向。サウジ・アラムコ社の担当者たちと英国のコントラクターオフィスで本格的なフィージビリティスタディに参画する。プロジェクトの全体像を再度検証しつつ具体化、各プラントの基本設計、規模、人員、諸経費などを精査しながら綿密な建設コストを算出、プロジェクトのフィージビリティを見極めるという作業で、まさにプロジェクト実施判断を行うための検討である。

同時に、サウジ・アラムコ社との協議の中で決まったイギリスのコントラクターを主導して基本設計を進めていく。そもそも石油精製を行って来たサウジ・アラムコ社と石油化学を行う住友化学では、プラント建設や設備設計のガイドラインとなる設計基準も違っている。佐々木は厳しいスケジュールの中、ときにはサウジ・アラムコ社と激しい議論を交わしながら、懸案議題を一つひとつ解決していった。
アラビア半島西部、紅海沿岸のほぼ中央に位置するラービグに、おおよそ20万平米の規模の土地にインフラが整備され、建設の槌音が絶えず響くようになった。


#5

2009年4月、ついにコンビナートは稼働

小さな街に日本やイギリス、スペインやイタリアから多くの建設技術者が集まった。巨大なプロジェクトだけに,主建設コントラクターだけで日欧8社にのぼった。そして、徐々に巨大コンビナートが立ち上がっていく。佐々木を最も心配させたのは、各コントラクターが建設した個々のプラントの境界部分の整合性である。配管の位置決めだけでなく、流体条件、テスト方法、スタートの手順などの整合性が取れてないと、連続したプラントは機能しない。個々のプラントを異なるコントラクターが担当しており、その境界部分の整合性には注意深い確認を行う。また設備の見落としがないかの確認も必要となってくる。
いよいよ建設の最終フェーズ。メカニカルランを行い、テスト用のガスや水を使って試運転をする。マイナートラブルもあったが、すべて想定内。対策を講じて、その後、製造を担当するペトロ・ラービグ社に引き渡し、実液・実ガスを使った試運転を経てスタートアップに導いていく。

「この段階でようやく、建設におけるひとつのヤマを超えたという実感を持つことができました。自分がやって来たことのスケールの大きさを客観的に捉えることができたのです」と佐々木は語る。
2009年4月、ついに石油精製・石油化学コンビナートの基幹設備のひとつであるエタンクラッカーが本格的に稼働を開始し、その後最初の石油化学製品が製造された。しかし、巨大なラービグ計画は、これで終わりを遂げたわけではない。第一期計画の完遂を受け、すぐさま第一期コンビナートをさらに拡張し、新たに確保するエタンとナフサなどを原料として高付加価値製品を製造する第二期計画が進行している。稼働は2016年。グローバル化の先陣を切り、さらなる高みを目指して、住友化学の社員たちは今日もさまざまな局面でチャレンジを続けている。


be WORLD CORE その志が、世界の芯になる

Project Story

Contents Index