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次世代エコカーの普及に不可欠な
リチウムイオン二次電池の高性能化を支える。

Project Story
04

ペルヴィオ®開発プロジェクト

be WORLD CORE その志が、世界の芯になる

Personalities

電池部材事業部
事業探索・開発グループ
グループリーダー
三井 慎一

エネルギー・機能材料研究所
電池部材開発グループ
グループマネージャー
西田 裕紀

#1

リチウムイオン二次電池の性能を高めるために

それは社会のデジタル革命前夜のことだった。携帯電話の小型化、高性能化に拍車がかかり、パソコンもデスクトップ型からノート型への変換期となった1990年代後半、小型・軽量で機器の長時間使用を可能にするリチウムイオン二次電池への期待が一気に高まった。リチウムイオン二次電池は正極と負極の間でリチウムイオンが行き来して充電と放電を行うことで繰り返し使用することが可能な充電池である。

「アプリケーションの小型化・軽量高性能化が進む一方で、充電池の高容量化は追い付いていなかったようです。充電池にもイノベーションが求められていたわけですが、高容量化が進めば発熱・発火のリスクも高まってしまいます。性能を上げつつリスクを低減していく取り組みが課題となっていました」(三井)

当時、研究所に勤務していた西田は、この課題を常に意識していた。

「私はリチウムイオン二次電池の正極材料の開発や電池評価に携わっていたのですが、高性能の正極材で電池を高容量化すると、電池の安全性確保が難しくなると感じていました。たまたま隣のチームが耐熱樹脂の一種であるアラミドの用途開発に取り組んでおり、両チームで議論した際、“このアラミドを二次電池のセパレータとして応用すると電池の安全性を向上できるのでは”との考えから、本格的な開発に取り組むことになりました」(西田)

1996年頃のことであった。

#2

新たなセパレータ開発へのブレークスルー

セパレータとは文字通り“セパレート(分離)するもの”であり、正・負電極の間に配置されることによって絶縁性を保つことが主たる役割である。仮に正・負電極が接触(ショート)すると発火するおそれがあるため、リチウムイオン電池の安全性を担保する上で不可欠な重要な部材である。

一方、充放電のためにはリチウムイオンが自由に行き来できる必要があり、そのためセパレータにはサブミクロンレベルの小さな孔が空いている(微多孔膜)。従来のセパレータはポリエチレンやポリプロピレン製のものが主流であったが、リチウムイオン電池の高容量設計が進む中でどんどん薄膜化され、安全性を維持することが難しくなってきていた。西田のチームが目を付けたのは、耐熱温度が高いアラミドをポリエチレン微多孔膜へコーティングすることにより、安全性を高めることができないかということであった。

「そのためにはイオンが動きやすい孔構造を形成しなくてはならず、アラミドでもそれを達成する技術が必要です。その開発には苦労しました」(西田)

当時の住友化学では、開発されたアラミドコーティングセパレータを電池メーカー数社に紹介し、サンプル評価を受けていた。その結果、2005年には某電池メーカーがニッケル系正極材を用いた最先端高容量電池にアラミドコーティングセパレータを採用する意向を示した。

なお、各社に提案していたセパレータは、アラミドをコーティングするためのベースフィルム、すなわち、従来から使用されてきていたポリエチレン製微多孔膜も必要とする。従来メーカーからの調達も検討されたが、住友化学は長年にわたって培ってきたポリマー加工技術を応用し、自社品の開発に果敢にチャレンジした。一方のアラミドポリマー合成技術と合わせ、ハイブリッドケミストリーの威力が発揮されたのである。

こうして顧客での採用が決まり、全社的に期待が高まる中、本格的に事業化の段階へと進んでいった。


#3

時間との闘い、そして量産化の壁

「電池メーカーに最初に納入したのは2006年3月31日でした。あのときのことは忘れもしません」

三井がそう苦笑するのは、「ペルヴィオ®」と名付けられたセパレータの量産化に向けた苦労がただならぬものだったからである。

高容量化競争の真っただ中にあった電池メーカーとしては、新設計の最先端高容量電池をすぐに市場投入すべく、三井たちに一日も早く「ペルヴィオ®」の納品を要請してきた。その時点で本格量産設備に着工していたが、完成までのつなぎ生産として、パイロット設備をフル回転させることで対応することにした。最初の納品には製品ラベルや梱包仕様などの細部までをゼロから取り決めて実施する必要があり、多忙を極めたが、なんとか要望納期に間に合わせることができたことから、三井は「今も忘れられない」と口にするのである。

ところが、本当の壁はその後に待ち構えていた。

最初の納品後、「ペルヴィオ®」の本格的な量産態勢(24時間連続稼働)に入っていったが、連続量産後にさまざまな想定外の課題が浮上。歩留まりが非常に悪かったのである。

「これではとても顧客が要求する数(量)とスピードに応えられない」。

西田、三井をはじめとするプロジェクトのメンバーは青ざめた。


#4

モノづくりの誇りを胸に、壁を乗り越える

電池メーカーの要求に応えるために、現場に駆けつけたのが大江工場(愛媛県新居浜市)生産技術センターのエンジニア達だった。

生産技術センターとは、どの事業部門にも属していない生産技術のプロフェッショナル集団。いわば住友化学の“モノづくり”の精鋭たちである。

三井たちの要請に応じ、彼らも1日3交代のシフトを組んで24時間体制で歩留まり向上に取り組んだ。長い生産ラインに沿って目を皿のようにして課題を発見しては、一つひとつ潰していく繰り返し。それは地道で気の遠くなるような作業だったが、プロジェクトのメンバーは見事にやり遂げ、歩留まりは飛躍的に向上したのである。

「そのとき全員に共通していたのは“この「ペルヴィオ®」は当社にしかできない製品であり、これを必要としている顧客になんとしても応えるのだ”という使命感でした」(三井)

その後もコスト改善や品質改善の要求に応えて、同じような大規模な対応をプロジェクトチームは現在に至るまで何度か行っている。


#5

やがて当たり前のようにEVが走る日を夢見て

2016年初秋、住友化学の発表したリリースが業界の耳目を集めた。韓国の子会社で工場を新設し、「ペルヴィオ®」の生産能力を現行の約4倍にまで引き上げると発表したのである。

「『ペルヴィオ®』が使用されたリチウムイオン電池が大量に搭載された某社の高級EVセダンがヒットし、汎用EVの量産へと踏み切られたことと、その他各社の状況を踏まえ、いよいよ本格的に電気自動車(EV)の市場が立ち上がるとの見通しから、増産を決めました」(三井)

リチウムイオン電池には、停電時のバックアップ用や電力供給の平準化など、電力用としての用途も期待されており、「ペルヴィオ®」の活躍できる市場はまだまだ広がると期待される。

「均一な製品を安定して生産する技術や検査技術など、今回のプロジェクトで培った経験や知見は、社内の他のプロジェクトにも水平展開したいですね」(西田)

やがてEVが当たり前のように走る時代が、間違いなくやってくる。

我々の開発した製品が社会を支えている──モノづくりに携わるものとしての最高の喜びを、そのとき、プロジェクトのメンバーは改めて味わうことができるだろう。


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